技術の小窓

企業のイメージ戦略における資料管理の重要性

技術部R&D担当 仲野 克麻

企業のイメージ戦略における資料管理の重要性

文化情報部 技術課  仲野 克麻

企業の多くは創業から現在にいたるポスターやパンフレット、その他業務に関連した書類などを保管しており、一部ではそれらの資料を企業ミュージアムという形で広く一般に公開している。企業の歴史や伝統は下の資料(※1)にあるように、その企業のブランドイメージを決定する上で重要な要素の一つであることから、戦略的に経営資産として活用していくことが大切である。そのために必要なことの一つは時間的かつ場所的な制約なく、いつでもどこでも活用できるように整備することである。保管されている資料の取捨選択を行い、必要と判断した資料は目録をとり所在を明確にしておく。目録を取った資料群はデータベース化することがより活用する上で望ましく、貴重な資料であれば資料の保存処理や修復が必要となる。企業によっては過去の資料などは必要のない遺物だと思われるところも少なくはないと思うが、ある一つの事柄に対し、以前はどのような対応策を取ったのか、残された記録から明確になることは今後の企業運営の上で重要なことと考えられる。

企業のブランドイメージを決定する要素

例えば、企業が自社の商品を展示会などでPRしようと考えた場合、必要な資料を揃えて展示会に持っていくことは当然のことである。しかし、創業時の資料のような貴重な資料の場合には移動中や展示中に破損事故が発生するというリスクを回避し、また公開することにより徐々に劣化していくことから資料を守らなくてはならない。複製(レプリカ)を制作するメリットは、このようなリスクを回避することができるとともに、一点の原資料から複数制作することで別々のショールームに展示することが可能となる。更に、複製物であれば貴重な資料と同一の資料を顧客に実際に触れていただき体感してもらうことも可能なため、自社の歴史と商品をより深くPRすることが可能である。

また、一口に製造業といった場合でも、顧客の在り方によって「B to B」型の企業と「B to C」型の企業とに分けることができる。例えば「B to B」型の企業のホームページでは、自社の歴史的紹介は簡単なものにとどめ、技術部分について写真や3D・動画を入れてかなり詳しく解説しようという取り組みを見て取ることができる。一方、「B to C」型の企業のホームページでは、企業情報の沿革部分などで年表とともにその年代の代表的商品が掲載されており、企業が有する歴史や伝統にスポットを当てた展開を見せている。その上で、技術部分でも生産する上でのカギとなる部分の詳細説明を加えるなど工夫した作り方がされている。これらの例から鑑みて、製造業という業種で取りまとめても、どのような顧客先を抱えているのかにより取るべきイメージ戦略は異なっている。

これらのように、企業が考えるPR方法はアナログとデジタルといった使用する媒体の面に加えて、企業が抱える顧客の形態によっても異なっている。よって企業のイメージ戦略を行う上で、企業が持つ経営資産をどのように活かしていくのか慎重に検討を重ね、複合的に対処していくことが効果的である。そして、いずれの場合においても鍵となるのは企業が有する「資料」という経営資産であり、それらの管理を怠ることは長い視野で考えた時に大きな損失につながる。

※1 「企業の製品安全への取組みに関する消費者意識調査」(株式会社三菱総合研究所・平成20年)

【プロフィール】
仲野 克麻 (なかの・かづま) 文化情報部 技術課
1976年、愛知県生まれ。
2000年、愛知淑徳大学文学部図書館情報学科卒業。
2005年、駒澤大学人文科学研究科日本史学専攻博士後期課程満期退学。(日本近世史)
同年、ナカシャクリエイテブ株式会社に入社し、デジタルアーカイブ業務などを担当している。


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